海上自衛隊 呉史料館 てつのくじら館見学記録


 2010年10月11日(月曜日)


 大和ミュージアムを見学した後に、「てつのくじら館」も見学してきました。
 呉市には、2つのミリタリー関係の大きな資料館が併設されているので、1度で2回楽しめた観光旅行になりました。

 てつのくじら館には、海上自衛隊が現在や過去に保有した兵器や装備品が展示されている他、海上自衛隊の歴史や掃海活動なども知ることができます。
 史料館のシンボルともなっている潜水艦「あきしお」は、同型艦が平成18年まで第一線に配備されていたので、比較的新しい装備と言えます。
 「あきしお」は大型旅客機並の大きさがあり、世界中を見ても、このクラスの潜水艦が陸揚げされたあまり例が無いそうです。
 つまり、てつのくじら館は、潜水艦を展示した数少ない施設と言えます。
 あきしおを間近で見ると、思っていた以上に大きく見えると思います。

 海上自衛隊呉史料館のホームページはこちらです。
   http://www.jmsdf-kure-museum.go.jp/index.php
 

大和ミュージアムの2階から見た呉史料館の「あきしお」です。
 潜水艦「あきしお」について

 「あきしお」は、10隻の姉妹艦が建造された「ゆうしお」型潜水艦の7番艦です。
 1番艦の「ゆうしお」は昭和51年に起工され、以後、1年に約1隻のペースで同型艦が建造されました。
 前型の「うずしお型」よりも、潜行深度や潜行時間などの基本性能の強化以外に、船体に気泡を発生させてノイズを遮断させるマスカー装置や、探知距離を増加させた曳航式ソナー、魚雷発射管から発射可能なハープーン対艦ミサイルが搭載されました。
 冷戦緊張下の時期に建造が重なることもあり、新開発の装備が順次搭載されていることも特徴です。
 「あきしお」は、18年間運用された後の平成16年に除籍、平成18年9月陸揚げされて、てつのくじら館の展示館の一部として使用されています。
「あきしお」の経歴
昭和58年4月15日 三菱重工株式会社神戸造船所において起工
昭和60年1月22日 命名、進水式
昭和61年3月5日 就役、第1潜水隊群第1潜水隊に配属
平成2年6月8日 第5潜水隊に配属替え
平成16年3月3日 除籍
「あきしお」の要目
基準排水量 2,250
全長 76.2m
全幅 9.9m
深さ 10.2m
主機械 ディーゼル2基1軸
メインモーター1基
馬力 水上3,400PS
水中7,200PS
乗員 75名
兵装 水中発射管6門
89式魚雷
  ハープーン対艦ミサイル 

 史料館に近づくにつれ、潜水艦「あきしお」の大きさを実感します。  史料館入口には、「あきしお」の略歴やデータが表示されています。
 史料館の2階は、「海にかける使命 海を守る熱き思い」と題して、海上自衛隊が国際貢献してきた掃海作業について紹介されています。  LUGM-145機雷です。
 海上自衛隊がペルシャ湾で実際に掃討した機雷です。
 掃海とは、機雷などの海中の危険物を取り除き、航路の海の安全を図ることです。
 旧日本軍が開発した「3式2号航空機雷1型」です。  ロシア製の「Udm機雷」です。
 掃海隊員の作業着と装備です。  水中処分隊員(EOD)の装備品です。
 「S-4機雷処分具」です。
 掃海艇から有線誘導し、爆雷を投下して機雷を処分します。
 掃海艇「ははじま」の後部甲板の掃海装備が、実物を同じ配置で再現されています。
 20mm機関砲です。
 海面に浮上した機雷を処分するための使用されます。
 航空機に搭載されている20mm機関砲よりも発射速度が抑えられていますが、対舟艇・対地攻撃、航空攻撃に対する反撃などにも、限定的な威力を発揮しそうです。
 フロート(小型)です。
 中央底部が大きく凹んでしますが、ペルシャ湾での掃海作業に破損しています。
 3階は、潜水艦についての紹介です。
 潜水艦「くろしお」のカットモデルです。
 「あきしお」型潜水艦のカットモデルです。
 バックボードの「KNOW YOUR BOAT!!」の意味は、「潜水艦乗りへの第一歩は己の艦を徹底的に理解することからはじまる。」です。
 上は操舵室、発令所(一般の艦船で言うブリッジ)
 下は魚雷発射管室
 機関室の様子です。
 艦内の様子
 3段ベッドとロッカーは至って普通です。
 ベッドに横になって記念撮影しても構わないそうです。
 13m潜望鏡1型改2です。  接眼レンズからは海面が見えます。
 気分は、連合軍貨物船を狙うUボートのトムセン艦長?
 潜水艦の模型も数多く展示されています。
 伊号第58潜水艦の模型です。
 「おやしお」の浅深度計です。
 これ以外にも潜水艦の装備品が展示されていました。
 艦載対潜無人ヘリコプター「DASH」です。
 現在は退役しています。
 無線操縦で艦艇から離れた敵潜水艦近くまで飛行して、魚雷で攻撃します。
 昨年就役したばかりの最新型潜水艦「そうりゅう」の模型です。
 早くも模型が展示されていました。
 「そうりゅう」は、全長84m、基準排水量2,950tにもなり、通常動力型潜水艦としては世界最大です。
 船体は葉巻型なので、「あきしお」と比較して直線的に見えます。
 海上自衛隊で初めてのAIP機関(スターリング機関)を搭載します。
 従来型の蓄電池とモーターでは、連続潜行は数日が限界でしたが、API機関の採用によって、2週間以上の連続潜行を可能としています。
 新たに水中運動性が高いX舵の採用しています。
 潜水艦「あきしお」の入口です。
 史料館3階から艦内に入ります。
 艦内に入って最初に展示してあるのは時計です。
 平成16年3月3日午後1時45分18秒に艦内の全て電源が切られて除籍になりました。
 天井に設置された「中部ハッチ」です。
 乗員は、このハッチから艦内に出入りします。
 第1、第2士官寝室です。
 士官用とは言え、3段ベッドで体が入るくらいの隙間しかありません。
 映画で見るUボートのベッドよりは、はるかに快適で清潔そうに見えます。
 士官公室です。
 天井は低く、中心から離れるにつれて天井が低くなり、潜水艦の外殻の丸さを感じます。
 あきしおの操舵は2名で行います。
 右側が縦蛇(潜蛇)、左側が横蛇を操舵します。
 目視ができない海中を意のままに操作するには、総員の連携が必要になります。
 艦長室です。
 汎用護衛艦の比較して、とても狭いです。
 潜望鏡です。
 実際の外の景色が見えます。
 戦闘用の表示機器でしょうか?
 2枚の表示パネルがありますが、30年前の設計にしては、洗練されているように見えます。
 照明の反射で見難いですが、イメージ画像は初期のテレビゲームのように表示されているので、状況が把握しやすいです。
 自艦を中心に敵艦と僚艦の方位、距離、速度などの様々な情報が表示されています。
 レーダーです。  海図です。
 実際には、海底地形などの様々な情報が書き込まれたものが使用されていたと思われます。
 史料館の3階です。
 「あきしお」から出ると、瀬戸内海が望めます。
 第二次世界大戦時、日本軍が配備した最大の潜水艦に装備されていた伊400型潜水艦用双眼鏡、倍率は22倍です。
 伊400の装備品が現存しているとは・・・驚きです。

 今回は写真が少なくなってしまいましたが、大和ミュージーアムを見学した後のことで、一つの目的を終えた気分だったので、写真を撮影することに気が行き渡りませんでした。
 「大和ミュージアム」と「てつのくじら館」の両方をじっくりと見学すると、半日近くも時間を費やしてしまいます。
 呉市近辺には、旧日本海軍の施設などが幾つか現存しています。
 この他にも、欲張って広島市内の観光も併せて考えたいところですが、1日だけは時間が足りなくなってしまいます。

 話は変わりますが、広島市内で食べた本場の広島お好み焼きは絶品でした。
 美味しい食べ物もいろいろとありそうです。
 遠方から足を運ぶのであれば、十分に観光場所を考えて、時間を配分したいところです。

 海上自衛隊には、「てつのくじら館」の他に、主に水上艦などにの資料を展示した佐世保史料館(長崎県)、航空機などを展示した鹿屋航空基地史料館(鹿児島県)があります。
 現存する二式大艇などを見たいとは思いますが、福島県からは遙かに遠く、海上自衛隊の史料館を全て拝観する機会は無いかもしれません。