陸上自衛隊広報センター見学記録(2011年)


 2011年7月28日(木曜日)


 首都圏に行く機会があったので、その序でに陸上自衛隊広報センターを見てきました。
 4年前にも広報センターを見学してきましたが、展示内容がどれだけ入れ替わっているのか興味がありました。
 陸上自衛隊広報センターは、埼玉県の朝霞駐屯地にあります。
 館内には、陸上自衛隊の現用装備品や退役した装備品などが多数展示されているほか、現在までの歴史を示す活動状況が記念品や写真など共に紹介されています。
 一部には最新装備が展示されている他、配備数が少なく希少な87式自走対空機関砲や89式装甲戦闘車などもあり、見所も押さえていると思います。
 対戦車ヘリコプター「AH-1S」のフライトシュミレータや射撃シュミレータ、3Dシアターなどの体験型機材もあり、限られた空間内に多彩な工夫が込められているとも感じられました。
 東京外環自動車道から近いので、遠方からのアクセスも良好です。

 陸上自衛隊広報センターの概要は、ホームページで紹介されているので、詳しい説明は省略します。
 イベントも多数企画されており、ホームページ上で募集も行われています。
    http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/prcenter/index.html

 広報センターの建物です。
 ガラス張りの部分が展示ゾーンになります。
 広報センターの前に展示された軽装甲機動車です。
 試作車のようですが、PKO活動でイラク派遣された仕様に施されています。
 装甲板やワイヤーカッターの追加など、細部の仕様が異なります。  陸上自衛隊創隊50周年記念モニュメントで題名は「未来」です。
 昨年制式化された10式戦車のパネルが展示されていました。
 実物が展示されるのは、暫く先になりそうです。
 イベントホール入口には、自衛隊員が福島第一原子力発電所周辺の活動を行う際に着用したタイベックスーツが展示されていました。
 イベントホールには、東日本大震災に伴う災害派遣活動状況を伝える写真が展示されていました。
 写真は、福島第一原発への放水やJヴィレッジでの準備状況などです。
 福島第一原発から30km圏内での行方不明者の捜索活動などの写真です。  2階展示室です。
 陸上自衛隊の歴史的な歩みを紹介する資料が展示されています。
 2階通路から見た展示ゾーンの様子です。
 「AH-1S」と「90式戦車」が目を引きます。
 同じく展示ゾーンの様子です。  遠隔操縦観測システム(FFOS)の無人偵察ヘリコプターです。


 世界最高水準を誇る「90式戦車」です。
 50tを越える車体からは、迫力が伝わってきます。
 砲塔上部は構造物が少なく、シンプルな感じがします。
 砲塔後部には自動装填装置と弾薬庫が収められています。
 砲塔前面のキャンバスが張ってある部分には、高い防御力を誇る複合装甲が使用されています。
 90式戦車の主砲は120mm滑空砲なので、ライフリングはありません。
 ボアサイトミラーは取り外されています。
 砲塔上部に装備された12.7mm重機関銃です。
 防盾には7.62mm機関銃が装備されます。
 砲塔左側には射撃手、右側には戦車長が乗車します。
 砲手用照準潜望鏡が大きな印象を受けます
 展示されている90式戦車は、二次試作車です。
 発煙弾発射器は74式戦車と同型のものが流用されていました。
 後方の様子です。
 パワーパックは、1,500馬力を発揮する水冷2サイクルV型10気筒ターボディーゼルエンジンです。
 牽引フックは、50t以上に耐えるため堅牢な作りです。
 量産型には装備されていないようです。
 120mm滑空砲弾です。
 写真上が「対戦車榴弾」、写真下が「装弾筒付翼安定徹甲弾」です。
 砲手用照準潜望鏡です。
 「AH-1S」のコクピットです。
 前部席は射撃手用です。
 ガラスに光が反射してしまうので、偏光フィルターが欲しいところです。
 後部席は操縦手用で、計器類が多いです。
 機首に装備された20mm機関砲です。  間近から見ることができるので、20mm機関砲のライフリングが確認できます。
 
 20mm機関砲の主要部分です。  20mm機関砲の後部は、歯車が剥き出しになっています。
 機首に装備された光学機器です。  正面からの被弾率を低下させるため、機体は細長く設計されています。
 機体右側には、TOW対戦車ミサイル4器と19連70mmロケットランチャー1器が装備されています。  70mm空対地ロケット弾です。
 手前は攻撃ヘリコプター「AH-64D」の模型、右側は20mm機関砲弾です。
 90式戦車とAH-1Sの射撃シュミレータです。
 テレビゲーム感覚で体感できます。
 AH-1Sの飛行を体感できるフライトシュミレータです。
 約2分間、飛行や射撃などの搭乗疑似体験が出来ます。
      
 迷彩服などの装備品です。
 左から「空挺服装(空挺傘を展開した状態)」、「空挺服装(降下準備の状態)」、「戦闘用防護衣」、「戦闘装着セット」です。
 自衛隊員が身に着ける装備品です。
 戦闘背のう一般用の重量は、約12kgあります。
 実際に背負ってみることができます。 
 防弾チョッキ2型です。
 重量は約12kgあります。
 迷彩服の試着体験もできるので、着合わせて記念写真を撮りたいところです。
 広報センターに展示されている銃器は3点だけです。
 上から「89式5.56mm小銃」、「5.56mm機関銃」、「74式車載7.62mm機関銃」です。
 防護マスク4型とガス検知器2型です。
 ガス検知器は、検知管に外気を通して、色の変化によってガスの種類と濃度を検査する器材です。
 昭和62年11月製と表示されているのが読み取れました。
 偵察用オートバイです。
 市販車のホンダXLR250を自衛隊仕様にしたものです。
 乗車することもできます。
 今年新設された戦闘糧食コーナーです。
 飲食ブースで販売して、飲食できるようにして欲しいと思います。
 3Dシアターです。
 自衛隊の活動について、3D映像で鑑賞することができます。
 地下指揮所の入口です。
 地下に構築する連隊規模の指揮所です。
 地下指揮所内の様子です。
 実戦さながらの様子が再現されています。
 テーブル上には、戦場での部隊配置の状況を再現した「砂盤」が展示されていました。
 ボードゲームのようです。
 「携帯電話機1号 JTA-T1」です。
 屋外に展示された戦闘車両などです。
 戦車1台、支援戦闘車両など7台、ヘリコプター1機が展示されています。
 各車両の大きさが比較できます。
 前線で使用される車両の前方投影面積は、比較的小さいことが解かります。
 「74式自走105mmりゅう弾砲」です。
 自走砲としては小型で、少数が生産されました。
 「74式自走105mmりゅう弾砲」の後方です。  陸上自衛隊の主力戦車「74式戦車」です。
 「74式戦車」の後方です。  「96式装輪装甲車」です。
 試作車のようですが、イラク派遣型の仕様が施されています。
 「96式装輪装甲車」の後方です。
 乗員2名の他、兵員12名が乗車できます。
 車長ハッチには、ワイヤーカッターと装甲板が取り付けられています。
 「89式装甲戦闘車」です。
 搭載火器は、35mm機関砲、7.62mm機関銃、対戦車ミサイル2器を装備しており、歩兵戦闘車としての武装は強力です。
 車体後方には兵員乗降用ハッチがあります。
 3名の乗員の他、兵員7名が乗車できます。
 79式対舟艇対戦車誘導弾発射器と発煙弾発射器です。  車体右側に装備された銃眼です。
 車内から小銃を射撃することができます。
 「87式自走高射機関砲」です。
 35mm機関砲2門を装備しています。
 現在の対空防御は、機関砲よりもミサイルに重点が置かれています。
 砲塔後方に索敵・追尾レーダーを搭載しています。
 プレートには制式化される以前の試作車なので、「新高射機関砲」、「1984年2月製」と表示されています。  「94式水際地雷敷設装置」です。
 水陸両用車で、海岸線に機雷を敷設する車両です。
 左側から、多用途ヘリコプター「UH-1H」、「75式自走155mmりゅう弾砲」、「中距離多目的誘導弾」です。
 多用途ヘリコプター「UH-1H」です。
 アメリカ開発され、多くの国で使用されているベストセラーです。
 日本ではライセンス生産されました。
 座席はキャンバス張りで簡素な作りです。
 兵員や物資輸送など様々な用途に使用できます。
 「75式自走155mmりゅう弾砲」です。
 広報センターに展示されている火砲では、最も大口径です。
 多くが北海道に配備されているため、姿を見られる機会は限られます。
 「75式自走155mmりゅう弾砲」の後方です。
 後継機の「99式自走155mmりゅう弾砲」の配備が進められおり、近い将来、一線から姿を消してしまいます。
 平成21年から配備が進められている「中距離多目的誘導弾」です。
 対戦車・対舟艇用のミサイルを装備します。
 ミサイルは比較的小型です。
 1台の車両にミサイルと追尾装置を装備しているので、単独で運用することができます。
 車内様子です。
 中央にノートパソコンが設置されています。
 ノートパソコンに発射制御装置がプログラムされているようです。

 陸上自衛隊広報センターは、その名称のとおり、自衛隊の装備品や活動状況を幅広い世代に紹介することを役割としています。
 そのため、展示されている装備品の種類は多岐に渡るものの、その数は非常に少ないと思います。
 火器や車両に限っても、自衛隊で使用された装備品は多くの種類がありますが、永年保存に向けた組織的管理の意図は薄いように感じられます。
 海外には大規模な戦車博物館などがありますが、国内の駐屯地に野ざらし状態で展示されている61式戦車などは、建物内に保存された装備品と比較すると、早い年月で朽ち果ててしまうことでしょう。
 多くの装備品を保存するためには、新たな施設の建設や広大な敷地が必要となり、世論の理解を得ることは難しいとは思いますが、退役後に完全に姿を消してしまう前に、後世に伝える博物館のような施設が整備されればと思います。