1 実銃について 生産国 ドイツ MAUSER社 製造開始 1935年 口径 7.92mm 装弾数 5発 全長 1,108mm 本体重量 3,9kg 第二次世界大戦におけるドイツの主力小銃。 第一次世界大戦前の1898年に採用されたGew98が原型。 この銃に改良を重ねたものが、Kar98kで1935年にドイツ陸軍に制式化された。 Gewehrは小銃、Karabinerは騎兵銃(カービン銃)の意味だが、この銃は当初から一般歩兵用に開発されており、銃身を短縮し操作性の向上を図ったことから命名された。 信頼性、命中精度も高く、ドイツ国内のみならず同盟国、占領国の工場をも動員し、大量生産された。 ドイツでは、大戦中に自動小銃や突撃銃も開発されたが生産数は多くなく、終戦までKar98kが主力火器として使用された。 モーゼルのボルトアクション機構は完成度が高く、この機構を参考とした小銃が各国軍隊で採用された。 2 エアガンについて (1) タナカ MAUSER Kar98k 販売元 株式会社タナカ 価格 60,900円(マガジン 5,775円、スコープ 7,875円、スリング 4,410円) 口径 6mm 装弾数 10発 全長 1,100mm 本体重量 4,0kg (2) マルシン MAUSER Kar98k 販売元 マルシン工業株式会社 価格 38,800円(カートリッジ(5発) 3,000円、カートリッジクリップ 500円、スコープマウントベース 4,500円、スリング 4,500円) 口径 8mm 装弾数 5発 全長 1,117mm 本体重量 2,675kg http://www.marushin-kk.co.jp/j-096.htm 3 概要 「MAUSER Kar98k」のエアガンは、タナカとマルシンの2社から販売されています。 タナカはガスボルトアクションライフル、マルシンでは8mmBB弾使用のカートリッジ式ガスボルトアクションライフルです。 タナカでは山岳部隊用に全長を短縮したGew33/44も発売されています。 4 タナカ MAUSER Kar98kについて (1) 品質 品質は最高級と称してもよいと思います。丁寧な作りでモデルガンか無稼動銃のようです。 外見から目に触れる材質は、亜鉛金属製のパーツか木製のストックです。 プラスチックやゴム製の部品は、内部部品に使用に限定することで、実銃を思わせる品質が再現されています。 重量も実銃とほぼ同じで、手にするとズッシリと重く、高級感も演出しています。 剛性も最高レベルで、通常のプラスチック製エアガンと異なり、ゲームでの使用で、割れる、曲がる、折れるなどの破損の心配は、まずありません。 モデルガンではないので、マガジンをリリースするレバーが付く、クリーニングロッドがダミー、ボルトを引いた状態での内部機構が再現されていないなど、エアガンのために再現不可能な部分もありますが、それを差し引いても良くできていると思います。 ストックの素材は、初期型とG-Versionは異なるようです。(写真は初期型) 現行型は分かりませんが、ストックの色が黄色みがかっていて違和感を感じます。 木製ストックや金属部品は、ゲームでの使用で傷がついても、プラスチック部品に傷がつくのと異なり、いい感じの使用感が出てきます。 (2) 射撃 ガスボルトアクションライフルの機構は、VSRやAPSなどのエアコッキングガンのようにボルトを引いてスプリングを圧縮するのではないので、ボルトを軽く引くことができます。 実銃の動作は知りませんが、ボルトが軽すぎることと、ボルトの取り付けが緩いために安っぽい感じがします。 排莢動作を再現するために、カチッとした動作の感触が欲しいところです。 ガスガンなので気温の影響を受け易く、冬期間は使い物になりません。 命中精度は東京マルイの電動ガン以下で、温暖時期でさえも集弾性は安定しません。 「ドイツ軍がゲームで使用できるエアガン」とか「スナイパー向けのエアガン」などの販売店の宣伝文句がありましたが、ゲームで使えるエアガンは誤りでないとして、スナイパー向けとするには低い命中精度です。 また、命中精度を向上させるためのカスタムパーツは、ほとんど発売されていません。 一方で盛夏時の初速は凄まじく、ネット上では2Jを越えたとも報告されていました。 暴力的な初速によって、飛距離、集弾性を確保しようとする意図があるようにも感じられます。 後にG-Versionにするための交換キットが発売され、ガス放出量を物理的に4段階に調整できるようになりました。 調整にはマイナスドライバーを使用して細かな部品を交換する手間がかかり、部品の紛失も心配されます。 時々ですが、ボルトを引いた際に部品の一部に誤作動が生じて、ボルトが戻らなくなることがあります。 (3) ホップ機能 可変ホップ機能が備えられています。 ホップ調整は、マイナスドライバーで簡単に調整できます。 命中精度が低いことから、ホップ機能に問題のあることが推測されます。 ホップのかかり具合が均一でないことがあり、遠距離を狙うと、BB弾が斜め上などに逸れることがあります。 このエアガンの性格から見ると、命中精度が劣る点が最大の欠点だと思います。 余談ですが、ミリタリー雑誌にタナカから発売された「M700AICS」は、実射性能が優れた可変ホップアップチャンバーが導入されていると説明されていました。 チャンバーやパッキンなどの分解写真が掲載されていましたが、「Kar98k」の部品の形状と変わりがないので、命中精度がどれだけ向上したのか確かめてみたいものです。 (4) マガジン マガジンからガス漏れがすると聞いたことがあります。 私はマガジン3個を所持していますが、そのうち1個が極少量のガス漏れを起こしました。 ガスガンのマガジンなので金属製で重いです。 マガジンの装弾数は10発なので、一般的なボルトアクションライフルよりも少ないですが、実銃が5発なので十分な弾数だと思います。 ボルトを引いた時にマガジンの上部が見えるので、弾切れになれば分かります。 マガジンは、軍装品の98k用弾倉には大きすぎて入りません。 (5) スコープ 初期型のZF41照準器のレプリカになりますが、実物と形が違うと不評のようです。 実物と同じく倍率は1.5倍でが、この倍率では目標の大きさは殆ど変わらないので、ブッシュに隠れた目標を索敵するには不利です。 銃を構えると接眼レンズから目の位置まで約20センチ離れているので、使用には慣れを要します。 実際にドイツ軍はZF41の欠点を解消するために、ZF39やZF4照準器に変更しています。 ゲームでの使用なので低倍率でも、それほど不利にはならず、銃を構えたまま右目でスコープを覗き、左目或いは両眼での索敵が行い易いと思います。 実物と形状は若干異なるものの、上面と左側面にドイツ軍のマークが表示されているところが、マニアの心を擽ります。 このスコープは、アイレリーフが遠く、接眼レンズが目の位置から離れたところで見やすく設定されているので、他の銃に取り付けて使用することはできません。 (6) その他 メカボックスのような精密部品は無く、ガスはマガジンに注入するので、分解は比較的に簡単です。 取り扱い説明書に分解図と部品表が表記されており、部品1個から通信販売で購入できるのでメンテナンスに便利です。 ゴム、プラスチック製の部品が少ないので、性能の良い潤滑防錆油を使用できます。 タナカのエアガンを、あるGUNSHOP店長は、「BB弾を発射することもできるモデルガンと考えた方がいいです。」と形容していました。 ハンドガンを例に取っても、一部のモデルは金属製で重量感があり、感触も良く高品質ですが、射撃精度には呆れてしまいます。 これがタナカの魅力であり、不満であり、BB弾が真っ直ぐに飛ばないことを差し引いてもファンを引きつける魅力があるのだと思います。 5 マルシン MAUSER Kar98kについて (1) 品質 はじめに断っておきますが、マルシンKar98kはAPS-2の機関部を内蔵するために改造しているので、ノーマル時状態はよく分からないので説明を省かせて頂きます。 このエアガンは、木製ストックに金属とプラスチック製の部品を組み合わせて使用されています。 使用されているプラスチックは、同社が説明するヘヴィウエイトプラスチック製であり、ABSより重量感があるということです。 品質は良好ですが、金属部品を使用するタナカと比較すると見劣りします。 (2) 射撃 カートリッジ式で8mmBB弾を使用します。 実銃同様の動作を再現していることは、命中精度やゲームでの使用が面倒だとしても、大きな魅力だと思います。 (3) スコープ スコープマウントが発売されていますが、取り付けには銃を分解してストックを削る作業が必要です。 ストックを大幅に削るので、一度取り付けたら外して使用できないことになります。 また、タナカのように専用スコープが発売されているわけではないので、現用のスコープを流用するか実物を使用するしかありません。 タナカKar98k用スコープを簡単な加工をすることで取り付けることは可能ですが、レシーバーがプラスチック製なので強度が弱く、破損の心配が生じます。 (4) その他 当然のことですが、タナカの部品とは互換性はありません。 スリングは流用できます。(写真のスリングはタナカ製です。) 6 APS-2内蔵Kar98kへの道 Kar98kは、ボルトアクションライフルなのでスナイパーとして使用することになります。 他の長物のガスガンと比較しては、決して命中精度が悪いとは思えませんが、APS、VSRと比較すれば、劣ることは明らかです。 命中精度の低いエアガンでスナイパーをすることは、非常に不合理でなりません。 ネット上では、Kar98kがスナイパーライフルに適するようなことが書かれていましたが、エアガンの性格上、そうした使い方しかできないのであって、ドイツ軍装に固執せずにスナイパーをやりたければ、他に優秀な狙撃用のエアガンがあり、高倍率スコープやバイボットなどを取り付けできるものを選択するべきです。 タナカKar98kの命中精度を上げるために、バレルの交換、クラゲの(強引な)組み込みなど手を尽くしましたが、目に見える効果は現れませんでした。 Kar98kが1Jを越えるハイパワーなエアガンということは知られており、G-Version交換キットを取り付けたとしても気象条件等により、その都度を実測しなければ初速が判らず、安全性、公平性に欠き、ゲームでの使用自体が適さないと感じられます。 Kar98kにAPSを組み込んで使用できることは知っていましたが、価格面で決断しかねていました。 ドイツを代表する小銃だけに、このエアガンを使いたいとか、Kar98kを使用しながら、ゲームでの劣勢を覆すことも考えましたが、最近では、アメリカ軍装備のゲーマーは、マルシンM1ガーランドを使用している場合もあるので、優位性を求める必要は無いとも考えられます。 APS内蔵Kar98kは、リンク先のネモトガンワークス(以下NGW)から購入しました。 店長が言うには「一生使える。」と太鼓判を押していました。(後々も面倒を見てくれると言う意味も含めて) 命中精度には定評のあるマルゼンのAPSシリーズ。 この銃の機関部をマルゼンKar98kに組み込むことで、命中精度の高いエアコッキングガンとして生まれ変わることになりました。 改造後には、kar98kの外見にAPS-2の性能を持ったカスタムガンになります。 機関部はAPSを使用しているので、豊富なAPS用のカスタムパーツを流用できます。 KMバレル、スプリング、シリンダー等のカスタムパーツを使用し、命中精度を優先させたカスタムを施しています。 ボルトアクションライフルは1.2J以下のレギュレーションに合わせ、平均1.15J程度に調整してあります。 外見も木製ストックを一皮剥いて加工しています。 命中精度はAPS-2の機関部を使用し、カスタムパーツを多用しているのでノーマル以上と思います。 インナーバレルの長さは約49cmです。(タナカは約58cmです。) 外寸に合わせて、APS-2のパーツを組み込まなければならないので、若干仕様が異なります。 BB弾の弾道が素直です。タナカも素直ですがコケることがあります。 品質で優れるタナカにAPSを内蔵すれば、最高のKar98kになる?と思いますが、タナカのKar98kは金属パーツが多用されるあまり加工が難しく、APSを内蔵することが難しいということです。 他にもKar98kにAPS内蔵のカスタムガンを製作するショップがありますが、そこでもマルシンのKar98kにAPSを内蔵していました。 7 結論 このエアガンは、使用者を徹底的に限定するので、万人に薦めることができません。 各エアガンの差異を分かり易くするために表にしてみました。 |
タナカ MAUSER Kar98k |
マルシン MAUSER Kar98k |
NGW MAUSER Kar98k |
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品質 | 金属部品を多用して高品質です。 | タナカには及ばないものの、木製ストックを使用するなどで品質レベルは高いと思います。 カートリッジ式で実銃に近い動作は魅力です。 |
マルシンに準じます。 カートリッジは使用しません。 |
価格 | 高価です。 本体、スリング、予備マガジン1個で実勢価格 56,000円 |
高価です。 本体、スリング、予備カートリッジとクリップ15発分で実勢価格 45,000円 |
高価です。 カスタムの程度によって差が生じますが、エアガン2丁分の費用、カスタムパーツ代、工賃を合計すると、約10万円 |
射撃 | ガスガンで装弾数10発 ゲームでの使用には耐えるレベル。 他に優秀なエアガンがあるので、物足りなさを感じます。 |
ガスガン カートリッジ式8mmBB弾で装弾数5発。 ゲームでの使用は不利 |
エアコッキングガンで装弾数25発 APS-2と同等の性能なので命中精度は高レベル。 ゲームでの使用に最適。 豊富なAPSのカスタムパーツを使用できます。 |
価格について補足しますが、10発分を射撃するために必要なものを追加購入するためには、タナカはマガジン1個で実勢価格で約4,500円、マルシンはカートリッジとクリップ2セットで約6,000円かかります。 エアガンには 実銃に近い品質と動作 ゲームに使用できる命中精度と良好な操作性 低価格の実現 が求められると思います。 自分本意な考えですが、タナカは高品質を実現できたので、ペガサスシステムに固執せず、カートリッジ式を採用して実銃に近いエアガンを再現し、マルシンは低価格に押さえながら、6mmBB弾でエアコッキング式、マガジン装弾式にして、ゲームでの使用を前提としたエアガンを開発して欲かったと思います。 仮に品質が高く、ある程度の命中精度があり、5発装弾のカートリッジ式なら購入したいと考えるのは私だけではないと思うのですが。 タナカとマルシンを比較すると、双方とも開発の意図が中途半端なままに商品化されたと思います。 両社の中途半端な開発方針が具現化したことが、APS内蔵Kar98kが誕生する経緯になったと思います。 初めてタナカKar98kを手にしたときには、ゲームで十分に使用できるエアガンだと思いました。 慣れるに従い、電動ガンや他社のボルトアクションライフルを相手には劣勢で、命中精度を追求するようになり、ゲームで有利なエアガンが欲しいと思いました。 命中精度が高ければ狙撃が面白くなり、Kar98kはドイツ軍装がしっくりと決まり、ゲームも楽しむことができます。 実際には、一日中、ボルトアクションライフルを使うのことは制限されたゲームしかできないので、電動ガンも使用してゲームをしています。 |
タナカ MAUSER Kar98k レシーバー上面 金属の質感と刻印がリアル感を演出しています。 木製ストックや金属部品に使用感が現れる、リアル感が出てきます。 |
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タナカ MAUSER Kar98k スコープ左面 スコープの左側と上面にドイツ軍のマーキングがされています。 実物と形状は少々異なりますが、上面と左側面にドイツ軍のマークキングが記されるところが、マニアの心を擽ります。 スコープは工具不要で簡単に脱着することができます。 |
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タナカ MAUSER Kar98k 左下面 ホップ調整ネジ、トリガー前方にはマガジンをリリースをするレバーがあります。 実銃はマガジン交換による方法ではなく、ボルトを引いて上方から5発をクリップで連結した実弾を押し込んで装弾します。 |
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タナカ MAUSER Kar98k ボルトを外した状態 ボルトは工具不要で簡単に取り外すことができます。 メンテナンス性は良好です。 |
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G-Version 変換キットの交換 ノズルの直径を狭くする部品を取り付けることによって、ガス放出量を物理的に制限して初速を減速させるパーツです。 部品には着色がされていて、直径が少しずつ異なり、部品未装着、無着色、黒色、赤色の4段階の順番で初速が遅くなります。 部品が小さいので、紛失に注意が必要です。 写真左 ボルト先端のノズル 写真右 変換器キットの交換部品 |
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ストックの色の違い ストックは木製でも色には違いが出ています。 上 タナカ 下 NGW(マルシン) タナカは純正のままで手を加えていません。 マルシンは表面を削いでアマニ油で磨いています。 |
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NGW MAUSER Kar98k ボルト周辺の状態 |
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NGW MAUSER Kar98k ホップ調整 ホップ調整は、マガジンを外してボルトを引いてから1.27mm6角ドライバーで調整します。 ガスガンのように気温によってガス放出量が変わるわけではないので、調整はほとんど必要ありません。 |