海上保安庁 海上保安資料館横浜館見学記録


 2012年10月10日(水曜日)


 海上自衛隊観艦式事前公開に併せて、海上保安資料館横浜館を見学しました。
 館内には、平成13年12月22日に発生した「九州南西海域工作船事件」の工作船が展示されています。
 この事件では、領海侵犯した北朝鮮の工作船は自爆して沈没しましたが、翌14年9月に工作船は海底から引き上げられ、現在は海上保安資料館横浜館で一般公開されています。
 事件の概要や工作船の引き揚げの状況などは、文末に記した海上保安庁のホームページで紹介されているので、ここでは割愛することにします。

 館内は、一部に海上保安庁の活動内容などを紹介しているコーナーもありますが、ほとんどは工作船に関係する展示物で占められています。
 今回は撮影枚数が少なかったので、回収物の写真が十分に掲載できないのですが、館内には金日成バッジ、通信機器、北朝鮮製の煙草や菓子袋、日本製の携帯電話や缶詰など多くの物品が展示されていました。

 海上保安資料館横浜館のホームページは、海上保安庁のホームページ内にあります。
    http://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/kouhou/jcgm_yokohama/index.html
 海上保安庁のホームページには、九州南西海域工作船事件の対応状況などが紹介されています。
    http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/report2003/special01/01_01.html
    http://www.kaiho.mlit.go.jp/10kanku/hushinsen/index.html
 海上保安庁のホームページの動画配信コーナーでは、映像が配信されています。
    http://www.kaiho.mlit.go.jp/stream/index.html

工作船 長漁3705



 全長
 29.68m
 型幅
 4.66m
 型深
 2.30m
 総トン数
 44t
 主機関
 ロシア製高速ディーゼルエンジン4機
 出力
 連続最大出力で1,100馬力×4=約4,400馬 力
 ※一般的な漁船の約10倍の馬力
 速力
 約33ノット(61km/h程度)
 航続距離
 1,200海里(速力33ノット時)
 3,000海里(速力7ノット時)
 写真は館内展示の模型、データは館内展示の案内板から引用しました。

 資料館は、横浜新港にある横浜海上防災基地に併設されています。  館内に展示された工作船です。
 工作船を1周しながら工作船や回収された資料などを見ることになります。
 船首左側の20mm機関砲の弾痕です。
 20mm砲弾は船体を貫通しており、左側に入射跡、右側には出射跡があります。
 工作船を復元した模型です。
 工作船は漁船に似せて偽装されていることが分かります。
 船体は損壊し、錆びているので、模型で当時の状態が確認できます。
 九州南西海域工作船事件の概要がパネルや大型モニターで説明されています。  工作船から回収された武器の一部です。
 5.45mm自動小銃4丁、7.62mm機関銃1丁、ロケットランチャー2門などです。
 手榴弾ですが、特異な形状をしています。  14.5mm対空機関銃の実包です。
 ロケットランチャーは、ロシア製の「RPG-7」のコピーと見られます。
 引き金側面に丸に星のマークとハングル文字で「68式7号発射管」の刻印があると説明されています。
 ロケットランチャーは、巡視船に向けて発射されています。
 武器を展示したケースは、もう一つあります。
 82mm無反動砲1門、携行型地対空ミサイル2門です。
 工作船には、多くの重火器が搭載されていたことが裏付けられています。
 携行型地対空ミサイル発射器です。
 回収された武器の説明です。
 7.62mm機関銃は「PK系」、自動小銃は「AKS-74」、82mm無反動砲は「B-10」、携行型地対空ミサイルは「SA-16」に類似していると説明されています。
 船体側板です。
 「MZ」と表示されていますが、これは宮崎県に登録された漁船であることを示します。
 工作船は、この側板を取り付けて、容易に日本漁船に偽装可能でした。
 回収された自爆用スイッチです。
 スイッチにはハングル文字で自爆と記載されています。
 船尾の状態です。
 後部には、両開きの扉があり、内部には小型舟艇1隻が搭載されていました。
 船尾の小型舟艇格納区画の状態です。
 船内には、衣類や木栓のような物で浸水防止が行われた跡があります。
 工作船の船尾に収容されていた小型舟艇です。
 小型舟艇の説明です。
 スウェーデン製ガソリンエンジンが3基搭載されており、最大速力は約50ノット(時速約92k/m)と推定されています。
 二連装機銃です。
 船体後部の格納庫内に隠蔽されており、レール上を移動させて後部甲板に設置できました。
 銃身にはハングル文字が刻印されています。
 引き揚げられた時には、銃弾が装填された状態でした。
 14.5mm弾は、旧ソビエト軍が使用していた対戦車ライフルと同等であり、高い威力を有しています。
 船尾の弾痕です。
 威嚇射撃は、通常は人が乗船していないとされる船首や船尾部分に向けられています。
 巡視船の20mm機関砲には、荒天下でも精密射撃が可能な目標追尾型遠隔操縦機能が装備されています。
 工作船の説明です。
 船内の多くは、機関室や燃料タンク、小型舟艇格納区画、14.5mm対空砲格納区画で占められており、居住用区画や設備は、ほとんど確保されていません。
 船尾部分です。
 後部甲板には、14.5mm対空機関銃の移動用レールが取り付けられています。
 船体中央から船首の様子です。
 船体中央右側には、自爆用爆発物が設置されていたので、上部構造物は形を残していません。
 船首部分です。
 甲板上部が開放された部分は機関室です。
 操舵室前の第2機関室
 船体前部には機関室が2つあり、それぞれ2機のエンジンが装備されています。
 第2機関室前方にある第1機関室  船首部分には、82mm無反動砲の設置台が取り付けられています。
 船首右側です。
 船名偽装用の鉄枠が取り付けられています。
 船首右側に残された20mm機関砲の弾痕です。