激闘!硫黄島
(ゲームジャーナルNo.16 収録作品)



タイトル 激闘!硫黄島
メーカー 株式会社シュミレーションジャーナル
価格 3,780円
2005年9月1日発売
ジャンル 作戦級シュミレーションゲーム
大戦末期に繰り広げられた硫黄島での激戦を再現する。
プレイヤーは、日本軍硫黄島守備隊長、アメリカ軍上陸部隊指揮官を担当する。
難易度
(※1)
難易度 2
ルールブック 12ページ
ゲームバランス
(※2)
良好
日本軍が若干有利
ゲーム期間 アメリカ軍攻撃開始日の昭和20年2月17日から同年3月14日まで
ゲーム規模 1ターン  3日
1ユニット 大隊、連隊規模
航空機、艦艇ユニットあり
カウンター数 90枚
硫黄島を21のエリアに分割
※1 10段階評価で「1」が最も易しく「10」が最も難しい。あくまで個人的な主観です。
※2 ゲームバランスは個人的な主観によるものです。
注意:画像の掲載には、株式会社ゲームジャーナル様から許可を得ています。
メーカーカタログ  http://www.gamejournal.net/

1 はじめに
 シュミレーションゲーム専門誌「ゲームジャーナル No.16」に付属するシュミレーションゲームです。
 太平洋戦争末期、硫黄島で繰り広げられた激戦をシュミレートしたものです。
 ルールブックは実質11ページで、戦闘ユニットは両軍とも30ユニットに満たないので、簡単にプレイできます。

2 ゲームを始める前に
 連合艦隊は壊滅し、日本の敗北が決定的となっていた1945年。
 東京から南方に約1,200kmも離れた、太平洋に浮かぶ僅か5km四方に満たない硫黄島では、40日間に渡って激戦が繰り広げられました。
 この戦いでは、日本軍死傷者約2万1千人に対して、アメリカ軍死傷者は約2万9千人にも及び、太平洋戦争で唯一アメリカ軍が日本軍の損害を上回る結果となりました。
 硫黄島の激戦は、昨年上映された映画「父親たちの星条旗」、「硫黄島からの手紙」で描かれているとおりです。
 映画の劇場公開に合わせて、硫黄島の戦闘に関する書籍が数多く発売されています。
 学習研究社から発刊されている「歴史群像」No.49号、79号でも硫黄島の戦闘が解説されていますが、読み易く、分かり易く解説されているので、お薦めできます。
 また、「硫黄島探訪」というホームページには詳しく解説されており、想像を絶する惨劇が読み取れます。
 詳しくは各誌等を参考にしてください。

3 ルール全般
 取扱説明書は、実質11ページです。
 歴史考察やプレイレポート等は、ゲームジャーナル本誌に掲載されています。

(1) マップ
 硫黄島が21のエリアに分割されています。
 半ブラインドサーチシステムが採用されており、日本軍はこのマップ上には初期配置しません。
 縮尺したサブマップ上に初期隠蔽配置し、アメリカ軍が同一エリアに進入したり、自軍の反撃によってメインマップに出現します。
 アメリカ軍は強力な火力を持つものの、陣地で防御された見えない日本軍相手に手探りで戦うことになります。
「激闘!硫黄島」のマップ
(2) ユニットの種類
 日本軍は、歩兵、戦車、機関砲、機関銃、野砲、迫撃砲、速射砲、噴進砲、司令部があります。
 ユニットの種類は多彩ですが、一部のユニットにしか特性はありません。
 アメリカ軍は海兵隊、戦車、砲兵があります。
 その他に艦艇、航空機があり、地上攻撃を支援します。
 ユニットには「近接攻撃力」、「移動力」のデータが表示されています。
 一部のユニットには「砲爆撃力」、「射程」、「装甲」が表示されています。
「激闘!硫黄島」のユニット
 
日本軍がカーキ色と茶色、アメリカ軍が青色です。
ユニットは両軍合わせてこれだけです。
(3) 移動
 ユニットの種別によって、移動力が異なります。
 戦車は山岳エリアには進入できません。
 日本軍の海軍砲と機関砲は固定設置されているので移動はできません。
 また、指揮系統に障害があるので、移動は大きく制限されます。
 アメリカ軍は橋頭堡を構築するまでは、砲兵連隊を揚陸できません。

(4) 戦闘
 戦闘は
  ・アメリカ軍砲爆撃
  ・アメリカ軍移動
  ・日本軍防御射撃
  ・アメリカ軍近接攻撃
と行い、アメリカ軍の攻撃が終了すれば、日本軍のターンに変わります。
 このゲームでは戦闘結果表を使用せずに戦闘を解決します。
 ユニットに表示された戦闘力の回数だけサイコロを振り、「5」「6」の目が出ればダメージを与えたことになります。
 アメリカ軍の攻撃力では勝るものの、山岳地帯には大きな防御力があるため、攻撃力を集中しなければ日本軍部隊に損害を与えることは困難です。

(5) 日本軍の戦力特性
 日本軍のユニットは通常は2ステップです。
 噴進砲は1回攻撃すると除去されるので、使い捨ての部隊です。
 露顕化していない日本軍ユニットが防護射撃を行った場合、奇襲攻撃として戦闘が有利になります。
 バンザイ突撃や斬り込み隊といった特別ルールもありますが、自軍にも大きな損失を与えてしまうので、戦況が悪化して止む得ない場合以外は行うべきではないでしょう。
 日本軍は、アメリカ軍戦車に対して、対戦車戦闘能力を持った速射砲3ユニットと第26戦車連隊の1ユニットのみが防護射撃を行った場合しか有効に対抗できません。
 日本軍の貧弱な対戦車戦闘能力が再現されています。

(6) アメリカ軍の戦力特性
 アメリカ海兵隊は、日本軍歩兵の火力「2」に対して「5」もあるうえに、4ステップあります。
 また、アメリカ軍はステップロスした海兵隊を橋頭堡で補充することができます。
 アメリカ軍戦車は装甲が厚いので、3回打撃を受けなければ損害を受けません。
 速射砲や戦車から待ち伏せ攻撃を受ければ、この特典は受けられませんが、それでも日本軍の攻撃はものともしません。
 アメリカ軍の地上ユニットは、10個しかありません。
 第3海兵師団を増援に回せば、5個増やすことが出来ますが、日本軍に勝利ポイントを与えてしまいます。
 アメリカ軍は強力な艦砲射撃と航空支援を受けることができます。
 航空機は天候の影響を受け、艦船は後半には減少します。

4 勝利条件
 両軍は、規定の条件を満たすことによってポイントを獲得し、ゲーム終了時にポイントの多い方が勝利します。
 ただし、日本軍ユニットが全滅すれば、その時点で日本軍の敗北になります。
 日本軍は主にアメリカ軍の戦力低下、自軍の残存ユニット数、支配エリア数によってポイントを得ることができます。
 アメリカ軍は主に飛行場を設営し、機能するターンごとにポイントを得ることができます。
 このゲームでは、勝利条件を満たすためには、敵軍の兵力を低下させる必要性が高いのです
ゲームのイメージ画像

開発中の画像なので、実物とは異なります。
ゲームのイメージがつかみ易いので転載しました。
5 プレイ雑感
 硫黄島の戦闘をテーマにしたシュミレーションゲームは、恐らく今までに無かったと思います。
 特殊な戦闘だったので再現することが非常に難しいためと思われます。
 ルールは簡単ですが、雰囲気が良く再現されていると思います。
 勝敗は、初期配置や運に左右されるような気がします。
 両軍ともユニットが少なく、ターンが少ないので、スリリングにゲームが展開されます。
 ルールは簡単ですが、特殊なゲームなので初心者には受け入れられないかもしれません。
 日本軍は、アメリカ軍にユニットの存在が明らかになってしえば、強力な砲爆撃を受けて壊滅してしまいます。
 そのため、防御に徹し、アメリカ軍の戦力を削ぎ落としていく必要があります。
 終盤まで戦力が温存されていれば、反撃の機会も生じてきます。
 日本軍は「水際防御」と「内陸防御」の作戦を選択できます。
 どちらが有効な戦術かは、実際にプレイして検証することをお薦めします。
 アメリカ軍は、強力な艦砲射撃と航空支援、砲兵、戦車の支援を受けることができますが、規定のターン内に勝利条件を満たすためには、迅速に進撃する必要があり、史実と同様にアメリカ軍は相当の出血を覚悟しなければなりません。

6 最後に
 過去に硫黄島の戦いをテーマにしたゲームが発売されていないことからも、ゲームで再現させることは非常に難しかったのだと思いますが、このゲームは硫黄島での戦闘の特質が上手く表現されています。
 それでいて、ルールが簡単でユニット数も少なく、セットアップからゲーム終了まで約2時間程度と手軽にプレイできます。
 ユニットが少なく、戦闘の度に次々と消耗していく様子は非常にスリリングで、各文献に描写されているような激戦ぶりが伝わってくることでしょう。
 このゲームは、ゲームジャーナル誌No.19号に掲載された国内出版ゲーム評価のアンケートでは、第3位と高い評価を得ています。
 映画や出版物を見て興味が湧いた方にはお薦めしたいと思います。
 ゲームジャーナルNo.16号には、もう一つシュミレーションゲームが同梱されていて、お買得感があります。
 悪名高いインパール侵攻作戦を含む、ビルマ周辺での戦闘をシュミレートした「ビルマの落日」ですが、こちらも日本軍プレイヤーは苦悩することになるでしょう。