青森県立三沢航空科学館見学記録


 2014年9月6日(土曜日)


 三沢基地航空祭を見に行くのに合わせて、青森県立三沢航空科学館を見てきました。
 3年前の平成23年にも、航空祭を見に行った序でに入館していますが、今回は十和田湖から引き揚げられた旧日本陸軍「一式双発高等練習機」が特別展示されているので、これを見るために再び訪れることにしました。

 この施設は、三沢基地の隣接しているので、航空祭開催前日に行われたブルーインパルスの予行飛行を見ることができました。
 ブルーインパルスの予行飛行の様子は、三沢基地航空祭の記事で紹介することにします。

 青森県立三沢航空科学館の概要などは、この施設が運営するホームページを参考にして頂くことにして割愛します。
 今回は2ページに分割して、第1ページには一式双発高等練習機の特別企画展示、第2ページには屋外展示の航空機を中心に紹介します。
 なお、屋外展示機の写真は、平成23年に公開した写真と重複します。

 青森県立三沢航空科学館のホームページは、こちらです。
   http://www.kokukagaku.jp/

 
今回の目的は特別企画展示の一式双発高等練習機でした。
 平成23年に上映された映画「連合艦隊司令長官 山本五十六」の撮影に使用された零式艦上戦闘機二一型の実物大模型も展示されていました。
 陽が射し込む強いので暗い写真になってしまいました。
 青森県立三沢航空科学館では、平成23年から期間限定の特別展として、映画の撮影に使用された零式艦上戦闘機五二型の実物大模型が展示されました。
 一時期は、二一型と五二型の2機が並べて展示されていました。
 レプリカなので、詳細な写真は割愛させて頂きます。
 実機の写真は、平成24年に所沢航空発祥記念館で展示された零式艦上戦闘機五二型などをこのホームページで紹介しているので、参考にして頂ければと思います。
 一式双発高等練習機(以下「一式双高練」)の紹介に移ります。
 実機からは原型が分かり難いので、先に写真を見て頂きたいと思います。
 実機を再現した模型も展示されていました。
 機体の形状が分かり易いと思います。
 これが平成24年9月5日に十和田湖から引き上げられた一式双高練です。
 国内に現存する唯一の機体となります。
 一式双高練について、館内の案内パネルの文面を要約して簡単に説明します。
 一式双高練は、旧日本陸軍初の本格的な双発練習機で、操縦訓練の他に航法、通信、射撃、写真撮影などの機上作業全般に使用されました。
 開発の経緯は、昭和14年3月に陸軍が立川飛行機に多目的双発練習機の試作を指示し、同年4月に設計が着手され、同年12月に設計を完了しました。
 昭和15年6月24日に試作1号機が初飛行すると好成績を収め、翌月には審査に合格し、正式採用が決定しました。
 海外の同種機を比較しても性能、構造など引けをとらない傑作機であり、生産機数は当初の計画を上回り、1,342機にも達しました。

 訓練用途の擬装により、以下の型式に分類されます。
 【一式高等練習機甲型】(キ54甲)
 操縦、航法の練習用で胴体上部に天測用の小さな半球型透明ドームがある。
 【一式高等練習機乙型】(キ54乙)
 旋回機銃射撃と無線通信及び爆撃の練習用で、胴体上部前後2ヶ所の半球状銃座があり、銃座の間を結ぶ半円筒型の風防がある。
 胴体内には2組の無線送受信機を持つことができる。通常爆弾搭載量は、15kg×10個
 【一式高等練習機丙型】(キ54丙)
 輸送機型で、胴体内に8名分の客席、手洗所、手荷物室があり、胴体上面には突出物が無い。
 【一式高等練習機丁型】(キ54丁)
 戦争末期に作られた対潜哨戒型で、胴体下面に磁気探知機アンテナを装備、盲目着陸装置が取り付けられている。

 【主要諸元】(甲型)
 発動機 : 九八式450馬力発動機2基
 主要寸度 : 全幅 17.90m、全長 11.94m、全高 4.950m、翼面積 40.00m、重量自重 2,954kg、搭載量 1,337kg
 性能 : 最高速度 367km/h、巡航速度 240km/h、上昇能力 高度3,000mまで9分47秒、航続距離 960km
 この機体は飛行第38戦隊の所属機で、昭和18年9月27日、秋田県能代から八戸基地に航空機部品の輸送に向かう途中、事故(故障?)により、十和田湖に不時着水し、乗員4名のうち3名が殉職しました。
 経年劣化は否めないものの、69年間もの間、湖底に沈んでいたとは思えないほど良好な状態を保っています。
 コクピット付近の様子です。
 厚みのあるガラスではありませんが、その多くは割れずに残っています。
 開口部から見た機内の様子です。  機首先端部分は損傷が激しいです。
 機首底部は損なわれています。  配線が剥き出しになっており、ジュラルミン製の機体表面は非常に薄く、ボロボロに劣化しているのが分かります。
 右側主翼底部の様子です。
 機体と主翼には、日の丸の塗装がハッキリと残っています。
 右側主輪です。
 一式双高練は、立川飛行機が初めて開発した双発、全合金製、引込脚の機体でした。
 主翼右側のエンジンです。
 主翼から外れていますが、原型に近い位置で展示されています。
 エンジンの説明です。
 左側主翼です。
 丈夫そうな骨格が窺えます。
 エンジンの取り付け部分の状態が分かります。
 右側主翼の着陸灯です。
 原型を留めています。
 右側主翼の翼端灯です。
 右側主翼の様子です。
 旧日本軍は、零戦を含めた航空機を約65,000機を生産していますが、国内に現存する実機は、この一式双高練を含めて僅か15機に過ぎません。 
 フラップは失われていますが、骨組みの様子が分かります。
 エンジンの右側に置かれた脚立は、実際に一式双高練の機体整備に使用された作業台と言うことです。
 機体右側後部です。
 日の丸が残っています。
 白色と灰色の部分がありますが、白色の部分には機体番号のようなものが見られるので、塗装が残っている部分と思われます。
 垂直尾翼には、飛行のマークが残っています。
 この機体は飛行第38戦隊の訓練隊が使用していた1機です。
 飛行第38戦隊は樺太の落合飛行場を本拠とし、北千島に一部を派遣して東北方面の偵察や警戒に従事した偵察部隊で、能代に訓練部隊を置いて搭乗者の訓練を行っていました。
 機体左側後部の様子です。
 乗降口ドアは開いており、機内の様子が窺えます。  機体表面が大きく欠落しています。
 左上 : 翼内燃料タンク、右上 : 主輪タイヤ、左下 : 電気配電盤、右下 : タイヤホイール
 翼内タンクには銘板が残っており、「立川飛行機株式會社 平成17年9月15日」など文字が読み取れます。
 タイヤからは、製造会社名や製造年月などを読み取れます。
 操縦席と計器盤です。
 多くの部品が展示されていましたが、一部のみを紹介します。  左側の部品の説明です。
 航空機は多くの部品から構成されており、主要部品の一部でも供給が滞れば、生産ラインが停止することになります。
 展示されていた写真の一部を紹介します
 湖底に沈んだ一式双高練の写真ですが、原型を留めていることが分かります。
 透明度が高く、冷たい湖水が劣化を遅らせたのかもしれません。
 引き上げ作業の様子です。
 機体はバラバラになっていますが、非常に良好な状態だったことが分かります。
 第2ページでは、屋外展示の航空機を紹介します。