陸上自衛隊 下志津駐屯地創設57周年記念行事 つつじ祭り見学記録


 2012年4月29日(日曜日)


 陸上自衛隊下志津駐屯地創立57周年記念行事を見学してきました。
 下志津駐屯地は、千葉県千葉市にあり、陸上自衛隊高射学校や第2高射特科群第334高射中隊などが配置されています。
 高射学校は、陸上自衛隊の高射要員の教育や養成を目的した施設であり、教育機材として新型の装備が優先して配備されています。
 この駐屯地では、配備数が少なくて希少な「87式自走高射機関砲」や「03式中距離地対空誘導弾」などを見ることができます。

 記念行事では、記念式典、観閲走行、対空戦闘訓練展示、装備品展示などが行われました。
 対空射撃訓練展示も行われましたが、整理券が必要だったので、見ることはできませんでした。

 掲載した装備の写真について、解り易く紹介するため、参考まで陸上自衛隊に配備されている対空装備について簡単に説明します。
 陸上自衛隊の対空装備は用途は、大別すると以下のように分類されます。

  中距離防空用 (※1) 短距離防空用 (※2) 近距離防空用 (※3)
前世代(現用) (※4) 改良ホーク 81式短距離地対空誘導弾(A) 87式自走高射機関砲
現用 (※5) 03式中距離地対空誘導弾 81式短距離地対空誘導弾(C) 93式近距離地対空誘導弾

  (※1) 中距離防空用は、師団等及び重要地域の防空が目的で、射程距離は約50km程度
  (※2) 短距離防空用は、主に師団防空用で、射程距離は約10km程度
  (※3) 近距離防空用は、主に低空域目標の撃墜で、射程距離は約5km程度
  (※4) 生産終了か、更新により退役が進められている装備
  (※5) 現用装備か新しく配備が進められている装備

 対空装備は、航空機や航空兵装などの技術革新に対応するため、主に電子機器の性能が大きく進化しています。
 改良ホークは、アメリカで開発された地対空ミサイルを改良してライセンス生産したものですが、基本設計が1950年代と古く、03式中距離地対空誘導弾が開発されました。
 改良ホークと比較して、最大有効射程距離、撃破率、同時交戦性、機動・展開性が大きく向上して、巡航ミサイルや空対地ミサイルへの対処能力が付与され、操作要員も約50人から約20人に省力化されています。

 81式短距離地対空誘導弾は、初期型(A)と比較して電子妨害に対する改良と、射程距離が延伸しています。
 後継型の11式短距離地対空誘導弾の生産が開始されたので、今後は更新が進むと見られます。

 87式自走高射機関砲は、高性能なレーダーや射撃統制装置を搭載したため、開発価格が高騰して少数しか配備されませんでした。
 主武装の35mm機関砲は、空対地ミサイルの有効射程距離の延伸や誘導装置の発展によって、有効射程距離内での目標機の撃破が困難となり、93式短距離地対空誘導弾の配備が進められることになりました。

 装備の種類や状況にもよりますが、約30年近くは更新されないので、旧式の装備品が完全に更新されるまでは長い年月がかかり、新旧装備が併用されるため、操作要員の教育を継続していく必要があります。

 今回は3ページに分割して、1ページには観閲行進前に展示されていた装備品、2ページに記念式典、観閲走行、訓練展示、3ページに装備品展示を中心に紹介します。
 なお、装備の名称は、陸上自衛隊のホームページに掲載されている名称や、装備に表示された標章を優先して使用しました。

 陸上自衛隊高射学校のホームページはこちらです。
    http://www.mod.go.jp/gsdf/aasch/aaspr-hp/

 ゴールデンウィークで晴天に恵まれたので、開門前の早い時間から長い列ができていました。  この駐屯地は、旧日本陸軍下志津陸軍飛行学校跡にあります。
 その余情を示す記念碑などが建立されています。
 記念式典の開始までには時間があり、観閲行進前に整列した車両を間近から見ることができました。  「1/2tトラック」です。
 写真左側は、赤色回転灯とサイレンを装備した特別仕様です。
 「82式指揮通信車」です。  師団司令部や特科中隊などに配備された指揮車両で、各種無線機が搭載されています。
 「03式中距離地対空誘導弾対空戦闘指揮装置」です。  03式中距離地対空誘導弾の運用には、各種機材を搭載した車両や操作要員が乗車する車両を数台必要とします。
 低空レーダ装置「JTPS-P18」です。  パラボラアンテナは折り畳まれています。
 主に低高度で飛行する航空機やヘリコプターを全周にわたって監視を行い、目標情報を師団対空情報処理システムなどへ伝送します。
 「03式中距離地対空誘導弾幹線無線伝送装置Ⅱ」です。  対空レーダ装置「JTPS-P14」です。
 中高度から高高度の敵を探知します。
 低空レーダ装置と組み合わせて運用されます。
 写真左側 : 03式中距離地対空誘導弾幹線無線伝送装置
 写真右側 : 対空レーダー装置「JTPS-P14」
 災害派遣に使用された装備品で、コベルコ建機製の油圧ショベルです。
 民間用の重機と差異はありません。
 「野外炊具1号」です。  200人分の主食と副食を45分以内に調理できます。
 災害派遣では、被災者への食事の配給に活用されました。 
 「1t水タンクトレーラ」です。  その名称の通り、1,000リットルの飲料水を運搬できます。
 「1・1/2t救急車」です。  「93式近距離地対空誘導弾」です。
 93式近距離地対空誘導弾は、最も多く配備されている対空誘導弾搭載車両では、  「81式短距離地対空誘導弾」です。
 改良ホーク高出力イルミネータレーダ(P-3)です。  ミサイルを誘導するための電波を照射するレーダです。
 改良ホークパルスCW捕そくレーダ(P-3)です。  目標を探知するレーダです。
 改良ホークパルス捕そくレーダ(P-1)です。
 本体のみですが、運用時には大型のパラボラアンテナを取り付けます。
 3・1/2tトラックに牽引された状態の地対空誘導弾「改良ホーク」です。
 運搬パレットに搭載されているのは、「改良ホーク模擬ミサイル」です。  「03式中距離地対空誘導弾」です。
 改良ホークの後継として開発された純国産の中距離対空ミサイルです。
 この駐屯地で必見するべき装備の一つです。
 「03式中距離地対空誘導弾発射装置」です。
 重装輪車に搭載されているので、非常に大きく感じます。
 全長約4.9m、重量約570kgの地対空誘導弾6発を搭載しています。
 射程距離は非公式ながら、50km以上と言われています。
 運搬装てん装置
 予備の誘導弾6発を積載しており、発射装置に再装填する車両です。
 「射撃用レーダ装置・空中線部」です。  アクティブフェーズドアレイレーダーであり、標的捜索、標的追尾、射撃管制を同時に行うことができます。
 「射撃用レーダ装置・信号処理部」です。  後部には、各車両の装置に接続する電源コードが取り付けられており、電源も供給します。
 「重レッカ」です。
 10tクレーンを装備した作業車両です。
 「73式装甲車」です。
 高射教導隊第3高射中隊の所属車両です。
 この中隊には、87式自走高射機関砲が配備されています。
 12.7mm重機関銃には、毛布が被せて隠されています。
 訓練展示では、豪快に空砲を撃ちました。
 前方機関銃のガンポートは、キャップで塞がれています。  軽装甲機動車と偵察用オートバイです。
 軽装甲機動車のドアには、第1空挺団第1普通科大隊の部隊マーク「弁慶」がペイントされています。  式典会場のグランドにも、幾つかの装備が配置されていました。
 式典終了後には、装備品展示も行われました。
 式典会場に配置された「ペトリオット」です。  「改良ホーク発射機」です。
 誘導弾は搭載されていない状態です。
 改良ホークの運搬ローダです。
 改良ホーク発射機に、誘導弾を装填する機材です。
 「改良ホーク中隊指揮装置」です。